質問:
高校生で、大会等で2分の原稿を読むことが多いのですが、よく、
「表現を全ての部分につけすぎてどこが山場か分からない」
「もう少し抜くところは抜いた方が良い」
と指摘されます。しかし、ただ淡々と読むのも違う気がします。
表現を強調しない部分(地の文に多い)はどのような意識で読むといいのでしょうか。
又、「山場を一個か二個に絞った方が良い」ともよく言われるのですが、山場というか強調する場所はどのように選べば良いのでしょうか。
とのご質問をいただきました。
このご質問に、朗読検定(R)認定プロフェッサーの2名が回答しました。
回答:朗読検定(R)認定プロフェッサー 藤野篤子
Kさま、ご質問ありがとうございます。
「抜くところは抜く」
確かに大切なことだと思います。
また、その抜き方にも、個性が現れてくるのかな、と思いますね。
全てが一生懸命だと、一生懸命さは伝わっても、じゃあどこが一番大事なの?となった時に、聴く側としては判断が難しくなったりするものです。
文章ごとに、「そこで何が大事なのか」ということを考えていくといいかと思います。
誰かと話している時を思い出してみましょう。
そんなに全てに表現を加えているかというと、そうでもない気がします。
かえってその方が伝わりやすかったりも。
淡々と読む、というとどうもマイナスに感じがちなので、抜いて読むのも一つの表現、と考えると良いと思います。
強調したい部分を際立たせるための、抜く部分。
逆に抜いた部分が際立つ、なんていうこともよくあります。
山場の選び方ですが、その文章を話す事の目的は何か、という事を考えると良いと思います。
例えば中島敦の山月記。
冒頭は
隴西の李徴は博学才穎、
天宝の末年、若くして名を虎榜に連ね、ついで江南尉に補せられたが、
性、狷介、自ら恃むところ頗る厚く、賤吏に甘んずるを潔しとしなかった。
と始まりますが、
ここで本当に大切なのは、
李徴はすごく頭よかったけど、ちょっとやな奴だった。
ということかと(僕は)思います。
どこどこの試験に受かってこんな仕事をして、というのも大事ではありますが、
最低限伝えておきたいのは、頭いいけどやな奴、
になるのではないでしょうか?
(この、最低限の絞り方にも人の個性が出てくるものなので、参考程度にしてください)
この、最低限必要な部分を赤、まあまあ必要な部分を青、などと色分けすると、視覚的に表現の助けになるかもしれません。
あとは、自分の好きな所を見つける。
例えば僕は「博学才穎」という言葉の響きが好きなので、読むとしたらここに何かしら遊びを加えたいな、と思ったりします。
この好きな部分を緑、などで考えてみるといいと思います。
この色分けは、
『三色ボールペンで読む日本語』著:齋藤孝
の受け売りなのですが、
朗読する時の考え方として、便利かと思います。
すごく大事は赤、
まあまあ大事は青、
自分の好きな所は緑。
こうすると、大切な「山」が絞れてくるかと思います。
(色だらけにならないように注意は必要ですが…)
回答:朗読検定(R)認定プロフェッサー 西村俊彦